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素晴らしき特撮野郎

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日本が誇る特撮について、あれこれと感想を述べるブログです

SFムービーセレクション ガメラVol.1

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以前に食玩のことについて、滾々と説いたんだけど、当時の食玩の造詣のレベルって、そのまま映画でも使えるんじゃね? って、本気で思ってしまうくらいすごいものが多かった。海洋堂を代表とした、大手造形メーカーは、その当時、少年たちの心を鷲掴みにして、確か、最もなりたい職業に、フィギュアの原型師的な職業が加わっていたこともあって、どれだけ注目されているかということが、そこからもうかがい知れる。

海洋堂だけでなく、様々なところがそれぞれに味のあるフィギュアを発売していた。KONAMIもそう。「SFムービーセレクション」と銘打って、エイリアンの超精巧なフィギュアを発売したのが見事に当たり、「SFムービーセレクションシリーズ」となって、様々なSF映画のキャラクターやメカニックをフィギュア化して発売、大ヒット商品となった。その中でも、「日本の特撮」ということで、特に優れた商品として、今回紹介する「ガメラ」のものがある。

当時の俺は貧乏な高校生。食玩だって、満足に買えたものではなかったし、トレーディングフィギュアということで、ほかのフィギュアと交換したりして、手元に残っているのは、今のところ、ガメラ・ギャオス・レギオンの三つ。しかし、この三つだけでも、当時のKONAMIの造詣技術の素晴らしさがうかがえるし、なにより、これほどまでにリアルでカッコ良いフィギュアを、300円で買うことができたという、ほんの6年程前のわが少年時代が、いかに貴重なものであったかということが、こいつらを眺めていると、ひしひしと実感させられるんです。


平成ガメラ三部作に登場する怪獣たちを、「映画よりリアルに」というコンセプトで立体化したこのシリーズは、とにかく大当たりした。なんで? って、理由なんて答える必要すらない。実物を手に取ってみれば、一目瞭然。こんなに凄いフィギュア、ヒットしないほうがおかしい。



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一つ一つのフィギュアを観ていこう。まずはガメラ。『イリズ覚醒』の時のガメラを立体化したもので、手のひらサイズであるにもかかわらず。その存在感たるや、ほかの300円食玩の比ではない。映画のガメラそのものがけっこう生物感にあふれているから、あまり大きな改変というものはないのだけれど、その代わりといっていいのかなんなのか、とにかくディテールが細かくて、遠目から見ると、ほんとうに一匹の生物のように見えてくるくらい。顔、特に口周りの造詣や塗装は完璧。小指よりも小さな面積に、どうやって塗ったの? と、ビックリするくらい細かく、そして正確に塗り分けがなされている。こういうのをみると、日本に生まれてよかったと感じますね。この、どこまでもこだわりつくす根性は、日本にしかないものだと、俺は固く信じている。

腕は通常タイプと、バニシングフィスト用のものと二つ付いていて、俺のはバニシングの方をつけている。オレンジのクリアパーツがとてもきれい。ポーズは一見シンプルなようでいて、首の伸び具合や足の踏み出し方、甲羅の傾け方など、細かなところまでとにかく凝りに凝られた、絶妙なバランスであると思う。こいつは、ほんとうにカッコ良い。以前に紹介したアートワークスは、どちらかといえばジオラマ的なところに魅力があったんだけれど、こいつは単品。だから「ガメラの食玩」ということで言うならば、このガメラこそが、全食玩中で、最も出来の良いものだと、いえるかもしれない。


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続いては、レギオン。こいつも大きな改変はなし。でも、あのレギオンをこのサイズで食玩化したことがまず、神業というに等しいもの。あの、ちょっと見ただけでは何がどうなっているのかまったくわからないレギオンのデザインが、ここまでコンパクトになるとは、正直、思ってもみなかった。そういう意味だけでも、こいつは貴重な一品。

ポーズは、ガメラと同じように一見シンプルに見えるけれど、実は、自立できるようにということも含めて、かなり計算されて作られている。首の傾け具合なんかも、良いですね。ほかのフィギュアとかで見るレギオンよりも、このレギオンは目が鋭くて、怒ったような印象を与える。その顔つきにうかがえる「動」の雰囲気を、首の伸ばし具合、傾き加減でうまく表現している。

造詣の面でも、文句なし。SFムービーセレクションは、ほんとうにハズレがない。ガメラの、ぬっとりとした生物感とは違って、甲殻類を思わせる固い表皮の表現が魅力的です。ざらざらとしていて、いかにも凶器って感じですね。なんだか、触れるだけで手が傷つきそうな感じさえ覚える。何本もある足や突起なども、きちんと一つずつ造形されていて、しかも一つずつ丁寧に塗装されている。この手間を考えると、300円なんて言う値段では、申し訳ないくらいによくできている。これも間違いなく、「レギオンの食玩」の最高峰に輝くでしょう。


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そして三つ目は、ギャオス。こいつがとにかくヤバイ。ガメラやレギオンとは、別の意味でヤバイ。「映画よりも生物らしく」というコンセプトは、何よりもこいつに当てはまっている。このギャオス、とにかく生き物っぽい。映画のギャオスは、もちろんのこときぐるみであるから、どんなに精巧な作りであっても、やはりどことなく人型の丸みを帯びている。けれど、このギャオスは違う。爬虫類と鳥の、あいのこのような「生物」として、完成されている。不気味なほどに骨ばった体、異様なほどに括れた腰、細かい鱗に覆われた首……蝙蝠でもない、人間でもない、怪物化したドラキュラを思わせるおぞましい体つき。じっと見ていると、恐怖すら覚えてくる。まさにこいつは、異形なんだということが、ひしひしと伝わってくる。これほど、生物感を感じさせる「異形」が、今まであっただろうか? ガメラやレギオンの完成度とは違った部分で、このギャオスもまた、一つの頂点を上り詰めた気がする。カッコ良い……とは、必ずしも言えないのだけれど、この薄気味の悪さ、まがまがしさがまた一つの魅力となっているのだから、やっぱりギャオスも、カッコ良いのかもしれない。







以上がコレクションの紹介です。では最後に、少しばかり所感をば。


今でこそ少し沈静化のある食玩業界。だけど、つい数年前には、こんなにも素晴らしい造詣の数々を、ほんとうにお手ごろな価格で手に入れることができていた。玩具メーカーには、この喜びをもう一度、ぜひとも味わわさせてほしい。俺のような少年にとって、昔から、一番簡単に解呪に触れられる方法って、食玩だった。ラムネなんかほっといて、箱のふたをびりびりに開け、パーツごとに分かれたフィギュアを取り出し、苦労して固いビニールを破るときの、あの興奮――それは俺にとって、今でも忘れることのできない、懐かしく、また輝かしい思い出の一つだ。――このガメラたちを手に乗せ、しげしげと眺めるたびに、俺はいつもそんなことを考える。そうして、またあの日の興奮が手に届くことを夢見て、いつまでも待ち続けている。
by anguirus | 2011-11-21 23:31 | コレクション

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